いま、会いにゆきます  -あたたかい毛布とスープが今は必要ー | えのきさんの痴漢日記

いま、会いにゆきます  -あたたかい毛布とスープが今は必要ー



著者: 市川 拓司
タイトル: いま、会いにゆきます
基本的には雑多に何でも読むタイプである。
話題な本でもまず読む。
そして文句は読み終わった後に存分に言う。
それが最近のスタイルでございます。

というわけで、読んじゃったよ。あの作品。
今大流行の市川さんちの「いま、会いにゆきます」

小説、ということを考えると近年の小説は小説としての効果を持ち合わせているのか、なんて考える。
そもそも「小説の効果」って何か、と言われると泣きますが。
でも、イメージしてた小説ってどっかに飛んでいったのかな、と感じる。
この小説はそういう意味でとても悩ませる。
話は面白い。僕が好きなタイプ。
喪っている主人公は喪ったままであって、小さな世界ができあがっている。
正直面白い作品でしたよ。号泣とまではなかったけどもね。
あったかいものっていうのが。
でも、この「あったかい感覚」ってそもそも小説の分野の仕事なのだろうか。
なんか、今まで読んできた小説の中で一番「あたたかさ」に違和感を覚える作品。
この感覚は何だろうか、と感じた瞬間に出てきたジャンルが「絵本」であった。
読者との距離が短く、優しく語りかけるトーン。
そして何よりも読者を完全に意識した文体とストーリー。
決して悪いことはない。そう考えると「世界の中心で愛を叫ぶ」も絵本の部類なんだ、という感じがする。
もう、小説としての鋭さや読者に与える冷たさなんか必要とされないのか。
今必要としているのは、柔らかい毛布と暖かいスープということか。