介護入門  一種のファンタジー小説として、現代版ハムレットとして。 | えのきさんの痴漢日記

介護入門  一種のファンタジー小説として、現代版ハムレットとして。

「書評つながり」という企画をやっているので、参加。
そして、取り扱う作品は「介護入門」。
僕の出た大学の先輩にあたるモブノリオ(南部虎太のペンネームという噂も)のデビュー作品。僕自身、あの大学に通っていて芥川賞を取る作家が出るとは思わなかったけども、現実になっちゃったんだからしょうがない。時代って変わっていくものなのね。

芥川賞を受賞した瞬間に、かなり興味があり「文芸春秋」で読んでみた。
この作品を読んだ人間で介護について考えてしまった人はもいるって言うじゃなーい?
あーた、これ単なる書き殴りですから!!
残念!YO!朋輩(ニガー)
ただ、書き殴りな分だけ勢いがある小説。
家族に対する愛情をはにかみながら綴る作品。だからニガーなんか出てきてしまうのか。
とにかく「愛」を語るのは難しい。
とてもだけど正気じゃ愛なんて語れない。
そう考えればとてもかわいい作品なのかもしれない。

勢いな分だけ読み進んでしますが、この小説はファンタジー小説である。
そして、確信犯的に主人公は狂っている。それはシェイクスピアの「ハムレット」のように。
奇行なんて正気の沙汰ではできない。
だから、狂うのだ。マリファナを使って。きちがいの振りをして。
そして、目的を達成させるのだ。愛情を昇華させるのは正気の沙汰では出来ない。
ハムレットは父王に対する愛情を表現するために復讐を行う。しかし正気では出来ない。
「介護入門」の主人公は祖母からくる、家族に対する愛情のために狂う。
他の妨害を受けないために、自分の愛情を全うするために。
人は愛のために狂う。セックスの絶頂期のように、理性も何も失ってしまうのだ。まぁ、セックスの場合と比較するのは雑だけどもね。

余談だけども、僕の家族の5人のうち2人は要介護者。
彼の描く世界とはまったく違う世界が繰り広げられている。
彼らは僕らを圧迫するし、僕らは彼らを忌み嫌う。愛情はあるけども。
僕らの介護はもっと薄暗く、憎しみと後悔に満ちている。
「介護入門」のようにハッピーに持ち込む余力なんてない。
そういう意味でもこの作品は「ファンタジー」なのかもしれない。